顔面神経麻痺とは…
顔面神経麻痺は、顔の筋肉を支配する顔面神経(第七脳神経)機能の障害です。
顔の筋肉の動きに問題が出るので、表情が歪んだり、目や口の動きが制限されたりします。
顔面神経は、感覚や運動の機能を担当しており、顔の表情をつくり、涙を生産し、唾液を分泌するなど、さまざまな役割を果たしています。
顔面神経麻痺の原因による分類
【ベル麻痺】
ベル麻痺は、特定の原因が不明な突然の顔面神経麻痺です。
感染症、自己免疫反応、ストレスなどが関連している可能性があり、ベル麻痺は最も一般的な顔面神経麻痺です。
【感染症による顔面神経麻痺】
帯状疱疹ウイルスやエプスタイン・バーウイルスなどの感染症が、顔面神経に感染し、炎症を引き起こすことがあります。
これは特にウイルス性顔面神経麻痺として知られています。
【外傷による顔面神経麻痺】
頭部や顔面のけが、外科手術、事故による外傷が顔面神経にダメージを与え、麻痺を引き起こすことがあります。
【腫瘍による顔面神経麻痺】
良性または悪性の腫瘍が顔面神経に圧迫をかけ、神経機能を妨げることがあります。
【自己免疫性顔面神経麻痺】
自己免疫疾患が免疫系が顔面神経を攻撃する原因となり、麻痺を引き起こすことがあります。
ギラン・バレー症候群などの自己免疫性神経疾患に関連することがあります。
【先天性顔面神経麻痺】
出生時から顔面神経の形成異常がある場合、顔面神経麻痺が先天的であると考えられます。
この状態は生まれつきのもので、成長と共に症状が現れることがあります。
【血管性顔面神経麻痺】
血管が顔面神経に圧迫をかけることが原因で、血管性顔面神経麻痺が発生することがあります。
顔面神経麻痺の症状
顔面神経麻痺の症状は、患者によって異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。
これらの症状は通常、顔の筋肉を制御する顔面神経の機能に障害が生じた結果として現れます。
・表情の歪み:最も特徴的な症状の一つは、顔の表情が歪んだりすることです。顔半分が他方よりも動かないため、感情表現が不均等になります。
・まばたきの困難:まぶたを閉じることが難しくなり、眼が乾燥する可能性があります。
・目の涙の過剰分泌: 顔面神経麻痺により、目の涙が正しく排出されず涙が過剰に流れることがあります。
・口の歪み:一方の唇が上がらないため、口が片側に歪んだように見えることがあります。
・口の閉じにくさ:顔面神経の麻痺により、口を閉じることが難しくなることがあります。
・唇の動きの制限:唇の筋肉が麻痺するため、言葉を発するときに唇の動きが制限されることがあります。
・音声の変化:顔面筋の制御が難しくなるため、話すときに声が変わることがあります。音が出にくくなることがあります。
・味覚の変化:一部の患者では、味覚に変化を感じることがあります。食べ物や飲み物が異常に感じられることがあります。
顔面神経麻痺の評価
【40点法(柳原法)麻痺スコアチャート】
以下の様な項目があります
①安静時非対称
②眉の皺寄せ
③目を閉じる(強・弱)
④片目つぶり
⑤鼻翼を動かす
⑥頬を膨らます
⑦イーと歯を見せる
⑧口笛
⑨口をへの字に曲げる
各項目は顔の部位や筋肉の動きを評価し、それぞれの項目にスコアが与えられ、スコアの合計が40点になります。
通常、スコアが低いほど軽度の麻痺を示し、スコアが高いほど重度の麻痺を示します。
顔面神経麻痺の東洋医学的な病態
【気と血の不調和】
東洋医学では、顔面神経麻痺は気と血の不調和に起因すると考えられています。
気と血は体内でのエネルギーと栄養の流れを制御し、体の機能を支えています。
顔面神経麻痺は、このエネルギーと栄養の流れに問題が生じた結果とされます。
【陰陽のバランス】
東洋医学では、陰と陽のバランスが重要です。
顔面神経麻痺は、陰陽のバランスの乱れと関連付けられることがあります。
病気やストレスなどがこのバランスを崩すと、体の異常が生じるとされます。
【証の分類】
東洋医学では、顔面神経麻痺をさまざまな証に分類し、それぞれに適した治療法を提案します。
たとえば、「気虚血滞証」と呼ばれる証は、気の虚弱と血の滞りを示し、治療は気を補い、血の流れを改善することを重視します。
【鍼灸療法と漢方薬】
顔面神経麻痺の東洋医学的な治療には、鍼灸療法や漢方薬が一般的に使用されます。
鍼灸は特定の経絡(エネルギーパス)に鍼を刺し、エネルギーの流れを調整し、血行を改善するために使用されます。
漢方薬は患者の証に基づいて処方され、体のバランスを調整するために用いられます。
当院での顔面神経麻痺の鍼灸治療
鍼灸治療は、顔面神経麻痺の症状の緩和や回復を促進するために行います。
当院では第一に鍼灸治療を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えます。
施術をする前に自律神経測定器を用いてその時の自律神経の状態を把握してから施術に活かしていきます。
そうすることで、的確な施術ができて他にはない施術効果が期待できます。
《鍼灸治療の効果》
・血流促進:鍼灸は、特に局所的に血流を促進し、組織に酸素や栄養素を供給する助けになります。これは神経組織の回復に役立つことがあります。
・筋肉の緊張緩和:鍼灸によって筋肉の緊張が緩和され、筋肉の弾力性が改善されることがあり、表情筋の機能を改善するのに役立ちます。
☆また、麻痺症状により筋肉の収縮が減り筋肉が硬くなっていってしまうのを予防します。この使えていない筋肉を軟らかく保つことが麻痺が改善してきたときに顔の動きを取り戻すための重要なポイント!となってきます。
・神経の刺激:鍼の刺激は神経組織に影響を与え、神経の再生や再接続を助けることがあります。
・疼痛の軽減:顔面神経麻痺に伴う疼痛や不快感の軽減に寄与することがあります。
・顔面神経の走行を考慮した治療:顔面神経菅や顔面神経の走行のエリアに対する鍼灸治療で麻痺症状の改善促進を図ります。