つわりとは
つわりとは、「妊娠嘔吐」ともいい
妊娠が成立した妊娠5週頃から、特に空腹時を中心に悪心を感じ時に嘔吐するが、
約4週間前後で自然に消失する軽度のものをさします。
悪心・嘔吐・食欲不振・食べ物の好みの変化
唾液の分泌亢進などの消化器症状や気分の変化といった精神症状も出ます。
日常生活に支障をきたさない程度のもので、治療の必要はなく、生理的と考えられています。
妊婦の約50~80%が自覚し、経産婦より初産婦に多く見られます。
妊娠悪阻とは
一般的なつわりとは、日常生活に支障のない程度の軽度なものをさします。
妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、症状が進み経口摂取ができず、日常生活にも影響を及ぼし
全身症状を伴った病的状態に陥ったものをいいます。
妊娠12週を超えて嘔吐が続くと、胎児・母体が危険となり
妊娠悪阻として治療が行われます。
第一期:頑固な悪心・嘔吐が時を選ばず、食事に関係なく頻発
全身倦怠感・めまい・胃痛・便秘など
第二期:第一期の症状に加えて中毒症状が出る
皮膚の乾燥・全身状態の悪化・不眠・脈拍弱・血圧減少など
第三期:中毒症状とともに脳症状が出る
不眠・めまい・頭痛・視力障害・耳鳴り・幻覚など
東洋医学からみたつわり
東洋医学では
妊娠による月経の停止と気血の状態の変化が
胃気の和降作用(消化したものを小腸から大腸に降ろしていき再び胃に飲食物を入れることができる作用)が障害され
その結果、胃気が上逆することにより、つわりが起こる
とされています。
代表的な病証が3つあります。
胃気虚
脾胃虚弱な体質の女性に起こる虚証の妊娠嘔吐のことを言います。
脾胃が虚弱な方が妊娠すると月経が停止します。
そうなると血海が瀉さなくなるために
衝脈(臓腑の血はすべて衝脈に帰(おく)られる事から、衝脈は五臓六腑の血海とされています)
の気が盛んになり上逆することで妊娠嘔吐が発生します。
衝脈は胃と同じ陽明に属するため、盛んになった衝脈の気が胃気の
和降作用(腐熟した飲食物を小腸に運ぶ作用)を失調させ胃気が上逆して悪心・嘔吐が発生します。
症状として、妊娠初期に悪心・嘔吐して食べられず食べてもすぐ吐く、
お腹が張る、倦怠無力感、眠いなどの症状を伴います。
治療法は、虚証のため、身体を補い、脾胃の機能を高めていき
胃の気を補うことで胃気上逆を改善していきます。
肝火
実証の妊娠嘔吐で、元々肝陽が高ぶりやすい女性に起こりやすいです。
妊娠すると血が胎児を養うために肝血が不足して、
そのために陰虚陽亢になり、肝陽が高ぶって肝火となります。
肝気の上亢は胃に横逆して胃気を上逆させて悪心・嘔吐を発症させます。
症状として、妊娠初期に酸っぱいもの・苦い水様物を吐き、食べるとすぐ吐く、
口が苦い、胸脇がはって痛い、イライラする、怒りっぽい、頭のふらつき、
めまい、口臭などがあります。
治療法は、肝陽の高ぶりを抑え脾胃の機能を高めていきます。
痰飲
実証の妊娠嘔吐で、痰飲が中焦(お腹)に停滞している妊婦に起こりやすいです。
脾陽不足のために普段から痰飲があるところに妊娠して衝脈の気が高ぶると
胃の昇降機能が失調して胃気が上逆して、悪心・嘔吐が発生します。
妊娠初期に水様物や白色泡沫を嘔吐し、早朝に症状が悪化します。
胸が張って苦しい、口がねばねばする、味がない、食欲不振、頭のふらつき
などの症状も出現します。
治療としては、痰飲を取り除き脾の機能を高めていきます。
※痰飲(水湿の邪が体内で長く停滞したことで凝縮されたもの)
まとめ
つわりと言っても、東洋医学的観点からみると、さまざまなものがあります。
妊婦さんご自身はかなりの辛さがあり、戦っておられると思います。
症状もみなさんそれぞれです。
鍼灸治療は、身体の気の巡りをよくして
停滞して流れが悪くなっているところへアプローチし
症状緩和へと導きます。
症状緩和へのお手伝いが少しでもできればと思いますので
つわりでお困りの妊婦さんはお気軽にお問い合わせください。