逆流性食道炎ってどんな病気?
逆流性食道炎は、胃酸や胃内容物が食道に逆流して炎症が生じる疾患です。
通常、胃酸は胃の中にとどまることで消化を助ける一方で、逆流性食道炎では胃酸が食道に逆流して炎症を引き起こします。
また、逆流性食道炎では胃酸の逆流が長期間続いたり重症化すると、食道の粘膜に損傷を与え、食道粘膜の変化が進行して「バレット食道」と呼ばれる状態になることがあります。
バレット食道は食道ががん化するリスクを増加させることがあるため、早期の対処が重要です。
逆流性食道炎で出る症状は?
【胸焼け】
胃酸が食道に逆流することで、胸の上部や胸骨周辺で痛みや熱感を感じる症状が現れることがあります。これが胸焼けと呼ばれ、逆流性食道炎の最も一般的な症状の一つです。
【喉の痛みや咳】
胃酸が喉に逆流することで、喉の炎症や痛み、咳が引き起こされることがあります。
特に夜間や寝ているときに症状が悪化することがあります。
【食道の痛み】
食道内部が炎症を起こすため、食道自体に痛みや不快感を感じることがあります。
【嚥下困難】
逆流性食道炎が進行すると、食道の炎症や狭窄が引き起こされ、食事の際に食物を嚥下しにくくなる嚥下困難が生じることがあります。
【背中や胸の痛み】
胃酸の逆流が背中や胸部にも影響を及ぼし、痛みを引き起こすことがあります。
胃の動きと自律神経の関係 〈ココがポイント!!〉
胃の動きや胃酸の分泌・流れは、自律神経系と密接な関係があります。
自律神経系は、無意識的に体内の機能を制御する神経系で、交感神経と副交感神経の2つの部分から成り立っています。
胃の動きや胃酸の分泌は、この自律神経系の調節によって影響を受けます。
【交感神経と胃の関係】
・交感神経は「戦う・逃げる」反応などのストレス応答を制御する役割を持ちます。
・ストレス状態では交感神経が優位に働き、胃の血流が減少し、胃酸の分泌が増加することがあります。これが、ストレスによって胃の不快感や胃酸の過剰分泌が引き起こされる一因とされています。
【副交感神経と胃の関係】
・副交感神経は「休息・消化・回復」の反応を制御する役割を持ちます。
・副交感神経が優位に働くと胃の血流が増加し、胃酸の分泌が抑制されます。これが、リラックスや消化の促進と関連しています。
【自律神経のバランスと胃の健康】
・自律神経系のバランスが崩れると、胃の動きや胃酸の分泌に影響が出る可能性があります。
例えば、交感神経が過剰に刺激されると、胃の運動が乱れたり、胃酸の過剰分泌が起こりやすくなることがあります。
・ストレスや緊張状態が持続すると、胃の血流が低下し、胃壁に損傷を与えるリスクが増加することもあります。
逆流性食道炎の対症療法
逆流性食道炎の対症療法とは、炎症や症状の緩和を目指す方法です。
【食事の改善】
胃酸の逆流を軽減するために、食事の内容や食べる時間に注意を払うことが重要です。
脂肪やスパイスの多い食品、カフェイン、アルコール、酸性食品(トマト、柑橘類など)を控える。
大きな食事を避けて、軽く頻繁に食べる。
食事後に寝る前に2〜3時間間隔を置く。
【体重管理】
過体重や肥満は逆流性食道炎のリスクを増加させる可能性があるため、体重を管理することが重要です。
【睡眠の姿勢】
寝るときに上半身を高くすることで、胃酸の逆流を軽減することができます。
ベッドの頭を少し上げたり、特別な枕を使ったりする方法があります。
【服用薬】
医師の処方に従って、抗酸剤(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー)、抗炎症薬などを服用することで炎症や症状を軽減できる場合があります。
【食道保護】
食道粘膜を保護するために、粘液産生を促進する薬や胃酸の分泌を抑制する薬が利用されることがあります。
【抗酸薬の利用】
医師が処方する抗酸剤(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー)を一時的に使用することで、胃酸の分泌を抑えて症状を緩和できます。
【ライフスタイルの改善】
ストレスの管理や喫煙の避けなど、ライフスタイルの改善も逆流性食道炎の症状に影響を与える可能性があります。
逆流性食道炎の東洋医学的な診方
【胃気の逆流】
東洋医学では胃気が胃から逆流して食道に影響を及ぼすことがあるとされています。
これにより食道の経絡に影響が及び、食道炎症の症状が生じます。
【胃脾虚弱】
東洋医学では「胃」と「脾」の働きが消化やエネルギーの生産に関連しており、これらの臓器の虚弱が胃酸の逆流を引き起こす要因となるとされています。
【湿熱の影響】
東洋医学では「湿」と「熱」と呼ばれる邪気が体内に影響を及ぼすとされています。
これらの邪気が食道に影響を与えて炎症を引き起こすことで、逆流性食道炎の病態が生じる可能性があります。
【気滞血瘀】
東洋医学では体内の「気」や「血」が滞ることで症状が生じるとされています。
気滞や血瘀が逆流性食道炎の原因となり、食道の炎症や痛みを引き起こすことが考えられます。
【肝気の乱れ】
東洋医学では「肝」のエネルギーがストレスや感情の管理に関連しています。
肝気の乱れが胃酸の逆流を引き起こすことで、逆流性食道炎の症状が現れることがあります。
逆流性食道炎の当院での鍼灸治療
当院では、まず自律神経の測定をもとに自律神経の調整に活かしています。
また、胸やけや呑酸などのストレスで自律神経が更に乱れていることも多いため、自律神経調整療法をしっかりと行うことが大切であると考えています。
併せて、逆流性食道炎の人に多い五臓六腑の『胃』と『肝』の状態を整えていきます。
【自律神経の調整】
前述した通り、胃の動き、胃酸の分泌・流れは自律神経の影響を大きく受ける。
その自律神経をまず整えていくことが重要となる。
【ストレスの緩和】
鍼灸はストレスの緩和効果があり、逆流性食道炎のストレスによる影響を軽減します。
【胃経・脾経の鍼灸】
胃経と脾経は消化器系の経絡であり、逆流性食道炎に関連する要因を調整します。
これらの経絡を刺激することで、胃腸の機能を調整し、逆流の緩和を図ることができます。
【中脘の鍼灸】
中脘は胃のエネルギーの集中地であり、胃酸の逆流に関連する症状の緩和に効果があるとされます。
【気血の調整】 鍼灸によって気や血の流れを調整することで、逆流性食道炎に関連する炎症や症状の改善が期待されることがあります。