東洋医学と鍼灸について
「鍼灸(しんきゅう)」や「東洋医学」という言葉は知っていても、「痛そう」「何に効くのかよくわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。テレビや漫画で見るような鍼は、実際とはイメージが異なることがほとんどです。
1. 東洋医学って何? 西洋医学との違い
西洋医学
・見方:体を臓器や細胞など細分化して捉え、検査数値やデータに基づいて病気の原因(菌、損傷など)を特定する。
・目的:病気や痛みを取り除く(対症療法、根本原因の除去)
・治療:症状に合わせた薬の投与、手術、局所的な処置など
・得意な分野:急性疾患、救急医療、外科手術、感染症など
東洋医学
・見方:体全体の状態を把握し、体の不調の原因となる「気・血・水」のバランスに注目します。
・目的:体が本来持つ治る力(自然治癒力)を高めることで、バランスを整える。
・治療:一人ひとりの体質に合わせて、ツボを選び、鍼とお灸を用いて全身の機能に働きかける。
・得意な分野:慢性的な不調、体質改善、自律神経の乱れ、西洋医学で原因不明とされる症状など。
西洋医学が「病名」を見るのに対し、東洋医学は「体質」を見る
東洋医学では、病気や不調は「気の巡りが悪い」「体が冷えている」「水分代謝が滞っている」など、体全体のバランスの乱れが原因で起こると考えます。例えば、肩こりでも、その原因が「胃腸の弱り」にある人もいれば、「過度なストレス」にある人もいるため、同じ症状でも治療法が全く異なります。
東洋医学のキーワード:「気」「血」「水」
東洋医学が健康の鍵と考えるのが、以下の3つの要素(生命活動を支える基本物質)です。
1.気
生命活動のエネルギーや、体を守る免疫力のようなもの。これが滞るとイライラや自律神経の乱れにつながります。
2.血(けつ)
体を養う血液そのもの。これが不足すると貧血や肌の乾燥、目の不調につながります。
3.水(すい)
血液以外の体液(リンパ液、汗など)。これが滞るとむくみやめまい、関節の痛みにつながります。
2.鍼灸の疑問:痛いの?どんな鍼を使うの?
太さ
髪の毛と同じ太さのものが主に使われます(0.10mm~0.20mm程度)
注射針のように、薬液を通す穴がなく、先端が丸く加工され痛みを感じにくい構造になっています。
※注射針の太さ(0.40mm~0.90mm程度)
痛み
多くの方が「何も感じない」か、「蚊に刺された程度」と感じます。
ただし、ツボに響く感覚(「得気(とっき)」といいます)を感じることがあります。これはズーンと重く響くような感覚で、鍼がツボに正しく作用している証拠であり、決して痛みではありません。
3.鍼が効くのはなぜ?
1.血流の改善
鍼やお灸をすることで、その周囲の血管が広がり、血流が劇的に改善します。凝り固まった筋肉に酸素や栄養が運ばれ、老廃物が排出されます。
2.鎮痛作用
刺激が脳に伝わり、脳内で痛みを抑える物質(エンドルフィンなど)が分泌されることで、痛みが緩和されます。
3.自律神経の調整
ツボへの刺激が自律神経の乱れを整え、リラックス効果(副交感神経優位)をもたらします。
4.鍼灸はどんな不調に効くの?
・慢性的な痛み
首・肩こり、腰痛、頭痛、膝の痛み
・自律神経系の不調
不眠、めまい、耳鳴り、動悸、パニック症状
・消化器系の不調
胃腸の不調、便秘、下痢、過敏性腸症候群
・目の不調
眼精疲労、かすみ目、ドライアイ、そして難治性の目の病気(緑内障、網膜色素変性症など)の進行予防サポート
・婦人科系の不調
生理痛、更年期障害、不妊治療のサポート
このように鍼灸は、肩こりや腰痛といった不調だけでなく、幅広い症状にアプローチに対応できます。