線維筋痛症とは?
線維筋痛症は、全身の広範囲にわたる慢性的な痛みやこわばり、倦怠感、睡眠障害などを特徴とする疾患です。関節や筋肉に明らかな異常は見られないにもかかわらず、強い痛みが日常生活に支障をきたすほど続きます。
日本では推定200万人以上がこの病気に悩んでいるとされ、特に30〜60代の女性に多いのが特徴です。見た目では分かりにくく、「気のせいでは?」「怠けているだけ」と誤解されてしまうことも多く、患者様の心に大きな負担を与える病気です。
痛みの原因は何なのか?
現代医学では、線維筋痛症の原因は脳の痛みを感じる機能(痛覚過敏)が過剰になっていると考えられています。つまり、本来なら痛みとして認識されないような刺激にも、脳が「痛い」と感じてしまう状態です。
背景には以下のような要因が複雑に絡んでいるとされています。
・慢性的なストレスや心の負担
・自律神経の乱れによる血流低下や筋緊張
・睡眠障害による回復力の低下
・ホルモンバランスの変化(特に更年期前後の女性)
「ストレスが溜まると体が痛くなる」「天気や気圧の変化で痛みがひどくなる」など、患者様自身が感じる“波”も、自律神経や体内環境と関係していることが多いです。
西洋医学での治療
現在のところ、線維筋痛症に対する決定的な治療法は確立されておらず、痛みの緩和と生活の質の向上を目指した対症療法が中心です。
・鎮痛薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などの薬物療法
・ストレッチ・軽い運動療法
・心理的ケア・認知行動療法
ただし、薬による副作用、効果の個人差、精神的負担などを理由に、「薬だけでは限界を感じている」という方も少なくありません。
東洋医学の視点
東洋医学では、線維筋痛症のような慢性痛は、「気・血・水(き・けつ・すい)」の流れの停滞や虚弱が原因と考えます。
具体的には
・気滞血瘀(きたいけつお):気と血が滞ることで、痛みやしびれが生じる状態
・肝鬱(かんうつ):ストレスによって「肝」の働きが低下し、筋肉や神経の緊張を引き起こす
・腎虚(じんきょ)・脾虚(ひきょ):疲労や冷えにより、全身の活力が落ちて回復力が低下
東洋医学では、「痛む部位」ではなく「なぜ痛みやすくなっているか」という体質や背景に着目して施術を行います。
当院の鍼灸施術
当院では、線維筋痛症の方に対しても「自律神経に特化した全身治療」と「患者様一人ひとりに合わせた施術」を重視しています。
● 自律神経の調整と全身の循環改善
線維筋痛症の方は、交感神経が常に優位になっており、筋肉の緊張が抜けにくい状態にあります。当院では【百会】【神門】【足三里】【肝兪】【脾兪】などを中心に、心身の緊張をゆるめて血流・リンパの流れを促進し、痛みの感じ方そのものを穏やかにしていきます。
● 局所ではなく“全体”を見る
当院の鍼灸は「痛い場所だけ」に鍼を打つことは基本的にありません。むしろ「痛みが出ている根本の体質やバランス」を読み解き、内臓の状態や睡眠・食欲・気分の傾向に応じてツボを選びます。
● 日々の変化に合わせた個別対応
「今日は特に肩まわりが痛い」「気圧が下がって頭痛がする」といった、その日の状態に合わせて刺激量や施術内容を調整します。
また、刺激が強すぎると逆に痛みが悪化することもあるため、無理なく、安心して受けられる“優しい鍼”を心がけています。
自宅でできるケアの提案
・セルフお灸(三陰交・足三里)
・湯船につかって体を温める
・低気圧の前は睡眠時間を長めにとる
・ゆるやかなストレッチや深呼吸でリセット時間をつくる
鍼灸の効果を日常生活でも維持できるよう、セルフケアのアドバイスも積極的に行っています。
最後に
「どこへ行っても効果がなかった」「話をちゃんと聞いてくれる場所がなかった」と、線維筋痛症の方が初めて来院された際によく口にされる言葉です。
慢性的な痛みは、“見えないつらさ”であり、心のストレスも大きくなりがちです。
当院では、鍼灸によるアプローチで体質そのものの改善と、自律神経の安定を目指した施術を行っています。
「もう治らない」とあきらめる前に、どうか一度ご相談ください。
あなたのつらさに寄り添いながら、一緒に“痛みからの卒業”を目指します。